【経済安保】高麗亜鉛(コリアジン)経営権紛争が「国際的な安保問題」に発展した3つの理由:米国・日本が警戒する背景とは?
韓国最大の非鉄金属メーカー「高麗亜鉛(コリアジン)」の経営権紛争が、なぜ米国や日本の国家安全保障問題へと発展しているのか?中国系資本の影、米国の11兆ウォン規模の製錬所プロジェクト、そして日本政府によるMBKへの制動など、グローバル経済安保の視点からわかりやすく解説します。
こんにちは。本日は、現在グローバル市場およびワシントンや東京の政界で最も注目されている経済安保のトピック、「高麗亜鉛(コリアジン/Korea Zinc)の経営権紛争」について解説します。
単なる企業同士の買収劇(M&A)だと思われていたこの事案ですが、なぜ「国際的な安全保障リスク」として米国や日本までが敏感に反応しているのでしょうか?その背景には、半導体・バッテリー・防衛産業を揺るがす「核心鉱物(サプライチェーン)」の覇権争いがありました。
1. 紛争の構図:事態の発端と「中国系資本」への懸念
高麗亜鉛は、亜鉛や鉛だけでなく、半導体やEVバッテリーに不可欠なレアメタル(ガリウム、ゲルマニウムなど)を生産する世界最大級の非鉄金属製錬企業です。
この企業の経営権を巡り、現経営陣(崔潤範会長側)と、筆頭株主である永豊(ヨンプン)および巨大プライベート・エクイティ・ファンド(PEF)のMBKパートナーズが激しい争いを続けています。
なぜ「国際的安保問題」になるのか?
最大の争点は、買収を仕掛けているMBKパートナーズのファンドに、中国の政府系ファンド(中国投資有限責任公社:CIC)などの中国系資本が含まれている点です。
技術流出の懸念: サモファンド(PEF)の特性上、短期的な利益を得た後に海外(特に中国企業)へ高麗亜鉛の高度な製錬技術や企業自体が転売されるのではないか、という懸念が急速に広まりました。
2. 米国が極度に警戒する理由:11兆ウォン規模の「US Smelter」計画
米国政府にとって、高麗亜鉛は単なる外国企業ではなく、「自国の経済安保に不可欠なパートナー」です。
高麗亜鉛は米国テネシー州に約74億ドル(約11兆ウォン)を投じ、米商務省や国防省(戦争部)が深く関与する統合製錬所建設プロジェクト「プロジェクト・クルーシブル(Project Crucible)」を推進しています。
脱・中国サプライチェーンの要: 米国は中国への鉱物依存を減らすため、高麗亜鉛の技術力を必要としています。実際、米国政府(合弁法人経由)が高麗亜鉛の株主として参入する動きを見せており、事実上の「米国の安保資産」として位置づけられつつあります。
ワシントンの反応: 米議会や政府高官からは、「中国とつながりのある資本がMBKを通じて高麗亜鉛を支配すれば、米国のコア鉱物サプライチェーンが脅かされる」との警告が出ており、米国のCFIUS(対米外国投資委員会)による審査や介入の可能性が現実味を帯びています。
3. 日本政府も動いた!MBKへの「インフラ・防衛技術」防衛策
このサプライチェーンへの危機感は、日本にも直結しています。
2026年に入り、日本政府(経済産業省など)は外為法に基づき、MBKパートナーズによる日本の大手工作機械メーカー「牧野フライス製作所」の買収計画に対し、異例の「中止勧告」を出しました。
二重用途(デュアルユース)の阻止: 工作機械は軍事転用が可能な「コア業種」です。日本政府が経済安保を理由にMBKにブレーキをかけたことは、「中国系資本の影響力があるファンドに戦略物資や防衛関連技術を渡さない」という日米韓の共通したグローバル規制のトレンドを証明しています。
高麗亜鉛への連動: この日本政府の決定は、韓国国内での「高麗亜鉛の技術流出リスク」に対する主張にさらなる正当性を与える結果となりました。
まとめ:これは「中立的な資本」vs「日米韓の安保同盟」の代理戦
高麗亜鉛を巡る攻防は、単なる株主間のマネーゲームではありません。
「バッテリーや防衛産業のサプライチェーンから中国を排除したい日米韓の経済安保同盟」 vs 「巨大な中国系資金を背後に持つサモファンド(MBK)」
という、現代のハイテク覇権争いを象徴する「国際的な地政学リスク」そのものなのです。今後、米CFIUSの判断や各国の規制がどう動くのか、グローバル市場の未来を占う上で目が離せない状況が続いています。
韓国の米国産LNG輸入量と比重の変化
| 米国産輸入量(万トン) | 総収入中の米国の割合(%) | 主な特長とイベント | |
| 2014 | 0 | 0% | 米国シェールガス商業輸出承認前 |
| 2015 | 0 | 0% | 初契約 |
| 2016 | 3.5 | 0.1% | 米国産LNG初導入開始 |
| 2017 | 195 | 5.5% | 韓国ガス工事サビンパス(Sabine Pass)物量本格搬入 |
| 2018 | 466 | 10.6% | 産輸入比重初の10%突破 |
| 2019 | 525 | 13.0% | 民間企業契約量の拡大 |
| 2020 | 592 | 14.8% | - |
| 2021 | 848 | 18.5% | 米国が輸入国3位の負傷 |
| 2022 | 576 | 12.4% | ラ・ウー戦争でアメリカ産LNGがヨーロッパに大挙撃つ |
| 2023 | 511 | 11.6% | 中東・オーストラリア産ガス価格安定で多様化 |
| 2024 | 564 | 12.2% | 輸入量反騰(年間560万トン以上維持) |
